ご無沙汰しております。7月19日の午前、博士論文の公聴会がZoomウェビナーにて開催されます。どなたでもご参加いただけるので、興味があればぜひ覗いてみてください。ポスターのURLか、ミーティングIDか、QRコードからアクセスできます。
ということで、6月というものが存在しない2021年になってしまいましたが(お察し…)、なんとか公聴会までこぎつけたので、がんばりたいと思います。まだまだ本番まで無数の直しがあったりするけどね!
ところで副題のアロメトリー性ってなんぞや、という感じだと思うので、簡単に説明しておきます。アロメトリー(弾性相似)は、異なる大きさで同じかたちが成立する際に使う「アイソメトリー」(isometru: 同型)と対比される言葉で、大きさが変化した際のプロポーションの歪みや構成の変化のことを示しています*1。ぼくの論文では、アロメトリー性は建築でも重大な問題だろう!と考えて、「規模の変化にともなう構成の傾向の違い」を建築空間のアロメトリー性と位置づけて考察しています。
建築の意匠に関わる研究では、大きさ*2を扱った研究が極端に少ないのが個人的に問題だと考えていました。プロポーションや構成を扱った論文は無数にあるのですが、そのなかで大きさを勘定している研究はごくわずか。基本ノンスケールなんですね。それってすごい不思議なことじゃないか、とずっと考えてました。でも、そもそも「規模の増減にともなうプロポーションや構成の変化」を指す用語が建築学に存在していないんですよね。ちなみにアロメトリーにもっとも接近したのは、おそらく19世紀の修復建築家、建築史家のヴィオレ=ル=デュクで、彼は「Elastic」(弾性)という言葉を用いました。彼の弟子のショワジーの『建築史』にはアロメトリー的な分析が豊富に出てくるのですが、とはいえ建築分野のなかではごくごく珍しいことなのです。
ではアロメトリー性ってどうやって観測すればいいの、となるのですが、定量的な分析を行う方法としてはただひとつで、「大きさの異なる似たような形態の事例を集めて比較する」しかありません。そこで、例外的に大量のサンプルが存在している円形平面と正方形平面に注目して、これらを統計的に分析してます。ということで、ポスターには正方形と円がこっそり登場してます(理科大のロゴマークよ、ありがとう)。ここまで書くとわかりやすいのですが、ぼくが研究室で作った書籍『図4 建築のスケール』と、内容や問題意識はほとんど地続きです。 ようやく一区切り……(無事終わればね!)。