MAR.11,2020

鉄筋コンクリートはその開発の初期段階においては教会から劇場まであらゆる種類の建物に使用されたが、その最も適切かつ必需的な用途は倉庫と工場だった。このふたつの類型は広大で遮るもののない内部空間を必要とするが、鉄筋コンクリート造は架構の内部空間への影響を最小限に抑えたのだ。ル・コルビュジエがドミノを構想し始めたときに確実に知っていたであろう、鉄筋コンクリートが適用された最も印象的な建物のひとつは、産業建築家アルバート・カーンがパッカード社およびフォード社の初期のデトロイト工場のために開発した「デイライト・ファクトリー」である(それぞれ1903年と1910年に完成)。デイライト・ファクトリーは長いスパンと構成材の大幅な削減により、インテリアが最大化された耐火構造で構成された。柔軟で明るいインテリアが可能になり、そこでは床──地面の人工的な再構築──が建築の主要な形態となった。無限に拡張可能な可能性を備えたこの自由な平面では、人間、機械、および商品がすべて同じ水平面に位置づけられる均一な空間的状況を作り出す。資本主義の歴史において、デイライト・ファクトリーは貨幣経済の基本原則を、すなわち抽象化された交換価値によって決定されるすべての事物の等価性を、建築言語に翻訳したわけである。

Pier Vittorio Aureli: The Dom-ino Problem: Questioning the Architecture of Domestic Space, Log 30, Anyone Corporation, 2014, pp. 161-162.

アウレリがこんな感じのこと書いてたのでずっと気になってるアルバート・カーン。でも日本語で読める本とか論文ってほとんどないのよねー。カーンのこと(あるいはフォーディズムと建築の空間構成について)集中的に扱った研究があったらぜひ読みたいのだけれど。レイナー・バンハムとか扱っていたかしら。

 ……と、思って調べてみたら、熊倉洋介さんの論文が出てきた。読んでみます。

熊倉洋介: アメリカの工場建築の造形手法, 日本建築学会計画系論文報告集, 第444号, pp. 169-175, 1993. 2

 

 そういえば熊倉さんといえば、曽原国蔵という建築家の「加藤さんのはなれ」という作品に感銘を受けて(新建築1954年5月号)ネットでなにか情報がないか検索したときに、熊倉さんのブログにヒットしたことを思い出した。

yosukekumakura.com

「加藤さんのはなれ」 、すばらしいのよね。宙に浮いた縁側、の外側に飛び出して庭のなかにぽーんと落ちる柱。この時代に木造でよくこんなことやるな〜と思った。昔の新建築を読んでて行ってみたい!!と強く思った作品のひとつ。現状のお庭もすばらしいし、大切に住まわれているのだな。設計者の曽原さんについて知りたいのだけど、まじで全然情報がない。まだ残っているうちに、ちゃんと写真が撮りたいと思った。

 ちなみに他に行ってみたいなと思ったのは、白澤宏規さんの「銀舎」(多木浩二の自邸!)、吉田研介さんの「チキンハウス」、長谷川逸子さんの「焼津の住宅」など。どれも傑作。