AUG.13,2021_夏の群馬

 昨日は久しぶりに倉賀野へ。設計した外構の状態のチェックが毎年恒例の夏のイベントみたいになっていたのだけれど、コロナを受けて去年は行けなかった。今年はワクチンを2回接種したこともあり、最大限注意しつつ視察に行くことにした。樹木も草花も増えていて、庭は順調に魅力を増していた。おばあちゃんも元気そうで本当によかった。

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 その後、密を避けつつ車で群馬県内を巡る。高崎の「rin art association(設計: SSA)は予想していたよりも規模がおおきく(3階建てのビルをまるまるひとつのギャラリーとして改装している)、展示も充実していて、地方都市ならではのゆとりを感じるギャラリーだった。設計は青木事務所出身の園田慎二さんで、枠の扱いなど細部がとても丁寧なのだけど、トップライトのため屋上をくり抜いて塔屋を建てる、といった大胆なことも同時にしていて、そのバランスがおもしろかった。近くに小さな川があった。コンビニで凍った「はちみつレモン天然水」を買った。

 第一工房設計の館林美術館にも、車で連れて行ってもらった。噂通りとてもきれいな美術館で、完成度がとても高い。このあと近くの太田市図書館・美術館にも行ったけれど、あり方が対照的だった(一緒に見るのがいいかもしれない)。館林美術館は(割合サイズの小さな)彫刻のための美術館で、多々良沼のほど近くに立地しており、田んぼがどこまでも続いているおおらかな風景のなかに建っている。この収蔵作品の明確さと立地環境の豊かさが、館林美術館の明快な幾何学的造形とスケールに説得力を与えている。単純な構成は見通しの良い風景にとてもフィットしているし、平面の幾何学形態を内外で連続させるという意図もこの立地環境を背景にうまく成立していた。個人的におもしろかったのは、エントランスの気積のささやかさだった。各彫刻作品が要求する空間の大きさと、風景が要求する空間の大きさに比して、人間が要求する空間の大きさが相対的に小さい、ということ。地方都市の、アクセスがそれほど良いとはいえない場所ということもあるだろうけれど、人間という存在に掛けられている比重が、小さいまでとは言わないけれど、塑像や風景に比べて大きいともいえない。拮抗している。人間のためだけに設計された建物ではない。その状態のおもしろさみたいなものがあった。ほどほどに溶けたはちみつレモン天然水はシロップのような味がした。

 太田市図書館・美術館は駅のど真ん前に立地していて、こんなに駅に近かったのかと驚く。形態がどうとかいうよりも、そこで起きている活動の混合具合が魅力的だった。ぴしっと目地が揃っている館林美術館とは対照的な野性的な構造体の上で、様々な活動が、肩に力が入りすぎていない仕方で確かに展開していた。あるていど時間が経って、町の人々が建物を使いこなす習慣が定着した状態の今、見ることができてよかったように思う。往々にして建物が与える納得感というのは立地環境の性格に依存するんだなということを、ふたつの建物を見てあらためて感じる。この場所にはこういう施設がふさわしいよな、という。

 最終的に、はちみつレモン天然水はうっすらはちみつ風味の水になった。あくまで水だというスタンスの飲み物なので、味が薄くなっても損した気分にならない。すごい。

 

○本日のタブ

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 2013年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展と合わせ、ヴェネツィアのプラダ財団行われた展覧会「When Attitudes Become Form: Bern 1969 / Venice 2013」に関する記事。この展覧会はクンストハレ・ベルン(スイス)にて1969年に開催された「Live in Your Head: When Attitudes Become Form (Works – Concepts – Processes – Situations - Information)」の会場空間と作品構成を再現したもの。「展覧会の再現」ということに強い興味がありタブを残していた。ここではこの展覧会以外にも、過去の展覧会を再現したものがいくつか紹介されている。良い記事。