FEB.26,2020_豊田市美術館

 豊田市美術館、これまで経験した谷口吉生の仕事のなかで一番よかった。谷口建築は毎回この病的ともいえるような目地のコントロールに目がくらくらするんだけど(視覚的にも、かかっている労力のすさまじさにも)、猪熊弦一郎現代美術館とか東山魁夷館をみたときは、なんでこんな大変なことするんだろう……と疑問に思っちゃったんだよね。でも今回の豊田市美術館は細部のコントロールには一貫して説得力を感じたし、この目地の病的なコントロールも納得できたのであった。

 違いはなんだろうかと考えてみたのだけど、あるとしたら外部空間+半外部の量かなとおもった。豊田市美術館は外部空間と半外部空間がかなり充実していて、そこで外壁のグリーンのスレートがペイヴに使われていたりして、目地(幅600mmくらい?)が内部空間の外側までずるずると連続している。目地が建物の外形の外側まではみ出て自然を侵食し、建物のアウトラインが曖昧になっている感じ。起伏のあるランドスケープを歩いていって少しずつ建物に近づいていくと、いつのまにかこの谷口目地で構成されたグリッドの世界に足を踏み込んでしまう。いわば方眼紙化した世界で、ここでは建築空間が美術作品の「地」となるためにありとあらゆる工夫が凝らされている。

 猪熊弦一郎現代美術館は建築家された外部空間みたいな箇所がほとんどないし(おおげさな半外部はあるけれど)、東山魁夷館は規模が小さいので用意に建物自体が対象化できてしまう、のだけれど、広大なランドスケープのなかで、ほとんど地形と一体化しているような仕方で存在しているこの美術館は、建物全体の大きさが終始つかめない。このバランスが効いていると思う。鈴木大拙館とかはあのわざとらしさ(演出感?)が苦手だったけれど、それも豊田市美術館は全然ないしね。山の上に自然に存在している感じ。

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Contax S2, Carl Zeiss Planar T* 1.7/50, 記録用 100