DEC.17,2019_最近の音楽②

 前回からのつづきです。今回は軽めに。

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○ Jeff Denson / Between Two Worlds

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Jeff Denson: b, Romain Pilon: g, Brian Blade: ds, Ridgeway Records, 2019.10

 ベースのジェフ・デンソンのリーダーアルバム。デンソンはほとんど知らなかったし、フランス人ギタリストのロメイン・ピロンも存在は知っていたけれどちゃんと聴くのはこれがはじめて。おそらく多くの人がそうであるように、ブライアン・ブレイド目当てで購入しました。

 ところがどっこい、デンソンもピロンもめちゃくちゃうまくて、最高の一枚だった。デンソンはわりとぐいぐい前にでるタイプのパワフルなベーシストで、ラインもメロディアス。対するピロンもフレージング・ハーモニーともに超一流だけど、弾きまくるタイプではなく、弾いていない時間をうまく使うタイプ。無論、ブレイドとはすこぶる相性がいい。収録局の10曲は、デンソンとピロンがそれぞれ5曲ずつ書き下ろしている*1。各曲オリジナリティがあって、すばらしい。今後もこの二人は追っていこうと思う。しかし、ブレイドの演奏は映像でみると魅力が倍増するな。生で見ると100倍くらいにすばらしいのだけど。なんでだろうね。

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○ Noah Preminger / After Life

www.youtube.com Noah Preminger: ts, Jason Palmer: tp, Max Light: g, Kim Cass: b, Rudy Royston: ds, Criss Cross, 2019.5

 クリス・クロスからでた若手グループのアルバム。リーダーでテナーのノア・プレミンガーば1986年生まれ、ギターのマックス・ライトにいたってはまだ27歳くらいだと思う。すごい。若くってまだまだこれからの彼らが、暗〜い曲をときにはかなりハジけながら演奏していて、最高だった。でも前述したデンソンの『Between Two Worlds』と比べると、演奏の密度が高すぎるような気もして、そこはちょっと不満だった。余白がないというか、音を詰め込みすぎているような、ね(とくにドラムが空間を埋めすぎているような)。ギターのマックス・ライトはそうとうに才能があるプレーヤーだと思うけれど、まだ──とくに音色に関しては──彼独自の表現を確立するというところまでは至っていないように思われる。とはいえ、全員これからの活躍がめちゃめちゃ期待できるミュージシャンだなと思いました。彼らがどういう進化をしていくのか、楽しみ。

 

○ Gwilym Simcock / Near and Now

www.youtube.comGwilym Simcock: p, Act, 2019.3

 来年リリースされる予定のパット・メセニーの新譜に参加しているフランス人ピアニスト、グウィリム・シムコックのソロアルバム。これがとても良かったので、メセニーの新譜もそうとう期待できるなと思った。

www.youtube.com  メセニーの新譜は『Secret Story』みたいになりそうだよね。ライブ的というよりは、スタジオ録音でできることを最大限酷使しているような曲の作り方。楽しみだな。と同時に、前回のメルドーの話ではないけれど、現在公開されている情報から鑑みるに、政治的な文脈も強そうだなと思える。メセニーの相棒のドラマー、アントニオ・サンチェスはメキシコ出身なので、尚更……。

 

○ Gilad Hekselman / Further Chaos

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Gilad Hekselman: g, Aaron Parks: key(1, 3, 6), Kush Abadey: ds(1, 3, 6), Dayna Stephens: EWI(1, 3), Rick Rosato: b(2, 4, 5), Jonathan Pinson: ds(2, 4, 5), Hexophonic Music / King International, 2019.11

 ヘクセルマンの新譜も良かった。とくにEWIで参加しているデイナ・ステファンズのプレイがすばらしい。EWIといえばいわゆるフュージョン、、という感じがするんだけど、音色の作り方やフレージングなど、完全に過去のフュージョン的な音楽性からは逸脱した演奏になっている(1、3、6曲目)。パークスのベースラインが癖になるんだよな〜。と同時に、しっかり地に足をつけたモダン・ジャズ延長線上の演奏もアルバムのなかで織り交ぜていて(2、4、6曲目)、というか両者を意図的に交互に繰り返している感じで、こういうコンセプトでアルバムが制作できる事自体が新しいなと思う。

www.youtube.com フュージョンといえば、本作ではジャコ・パストリアスの「Teen Town」をカバーしていて、めちゃくちゃ意外だった。そこ行くんだ!!って感じ。キッチュな音楽性に向かわないような、フュージョンのこうもありえた可能性(マイケル・ブレッカーがまだ生きていたらありえたかもしれないフュージョンの進化)を追求してみようという方向性が、ヘクセルマンの興味としてあるのかなって思ったな。で、これを聴いてジャコを久しぶりにめちゃめちゃ聴き直してたんだよね。『ジャコ・パストリアスの肖像』(1976)とか、あらためて聴くと本当にめちゃくちゃよくって、感激した。

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○ Jonathan Kreisberg / Capturing Spirits - JKQ Live!

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Jonathan Kreisberg: g, Martin Bejeran: p, Matt Clohesy: b, Colin Stranahan: ds, New for Now Music, 2019.11

 クライスバーグの新譜は安定してクライスバーグだな、って感じだった。ジョナサン・クライスバーグは典型的な「ひとつのことしかできない」演奏者で、でもぼくはそこがとても好き。今回も今までの彼の音楽性から大きく逸脱することはないけれど、でも随所でいろんな部分がバージョンアップされている。ただ、この音色の改良はちょっとどうなのか。ほとんどカートじゃないか、、という。

 

○カネコアヤノ / 燦々

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カネコアヤノ: vo, g, 林宏敏: g, 本村拓磨: b, Bob: ds, 1994, 2019.9

 最近毎日聴いてる。去年の『祝祭』もすごかったが、今作もめちゃくちゃいいです。ザ・ストロークスとかベル・アンド・セバスチャンとか好きな人は間違いなく好きだろうな思う。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを参照点にするような?、2000年代以降燻りつづけているロックンロール・リヴァイバルの系譜。来年の単独ライブ予約しようと思ったんだけど、だめだった。あっという間に完売でした。カネコさんは声のトーンの、細かいニュアンスの表現がすごい。ブルー・ノートにグリスアップするときの声の抜けのよさ!!とか、日本人離れしていると思う。バンドメンバーのバックアップも強力で、バンドで作ってるサウンドだなという感じがする。とくにベースの本村さんなしにはどの楽曲も成立しないのではないのではないか、思わせられるくらいで、「シンガーソングライターのバンドセット」で片付けられる感じでは全然ない。あと奥山さんの撮影の、『祝祭』(2018)収録の「ロマンス宣言」のMVがすばらしい。とてもかわいい。

www.youtube.com 楽曲の雰囲気や声のトーン、そして参照している音楽のジャンルや年代も含め、カネコさんの音楽性はMargaret Glaspyに似ている気がする。そしてギターの林宏敏さん、Julian Lage好きそう。

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ここから先は新譜とかではなく、個人的に最近よく聴いているもの。

○ Cluster & Eno

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△ Cluster & Eno, Sky Records, 1977.6

 尊敬する先輩のおすすめもあり、このアルバムはよく聴いた。全曲徹底して美しいけれど、映画の殺人シーンとかでも流れてそうなダークな曲(3曲目とか)もあってたまらない。クラウトロック〜アンビエント・テクノあたりの流れを(今までみたいなつまみ食いではなく)一回ちゃんとおさえておこうと思って、いま集中して聴いているところです。こんなときにジャニスがあったらねえ。

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○ 坂本龍一 / Chasm

 上記の流れもあってひっさしぶりに聴いているけれど、めちゃくちゃいいね。1曲目の「undercooled」これまでなんとなくいい曲だな〜くらいにしか聴いていなかったけれど、あらためて歌詞を確認するとこれがまためっちゃよくて感動した。下はMステ出演時の映像。この時代のMステはすげえな〜。坂本さんがギラついていてかっこいい。

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○ Oval / 94diskont

www.youtube.com  初期のOvalもね、いいよね。

 

ということで今回はここで終わり。また半年後くらいに。

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前回と前々回は以下からどうぞ。

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*1:「Song of a Solitary Crow」、「Nostalgic Farewell」、「Listen Up」、「Lost and Found」、「Between Two Worlds」がデンソン作曲(順に2、5、6、8、9曲め)。「Sucre」、「En Trois Temps」、「Generation」、「Madrid」、「Azur」がピロン作曲(順に1、3、4、7、10曲め)