SEPT.23,2023

東京オペラシティアートギャラリーで、空想上の構築物を描く野又穫の個展を見る。野又の絵画は初期ではアーチが多用されるが徐々に風がモチーフになっていく。最初は西洋的な建築のエレメントを引用するポストモダン的なムードからより非歴史的な幻想的建築物の描写への移行なのかと感じていたのだけれど、徐々に、これは単に、圧縮力から引張力という力学的な問題系の変化なのではないかと思い至る。組積で成立している建築から、ワイヤーのテンションで空から引張られる建築へ。引用がどうとかではなく、構築物を成立させている力学の反転、というわけだ。ある意味でそれは、歴史からの脱却ということでもあったのかもしれない。鑑賞後、オペラシティの地下の中華屋で夕ご飯を食べ(中華屋はお粥があるので0歳児づれにとってありがたい)、原瑠璃彦さんの『洲浜論』刊行パーティに参加しに代々木上原へ(原さんは妻の昔からの知人で、ぼくは初対面)。『洲浜論』を読み込んだ状態で参加できなかったのが残念だった。展示で何度もご一緒している美術批評家・キュレーターの近藤亮介さんもいた。近藤さんと知り合ったのはここ1、2年のことなのだが、すでにかなり顔なじみ感がある。とりあえずいたらほっと安心できる人である。