MAY.16,2021_ゴジラS.P

 円城塔脚本の「ゴジラ シンギュラポイント」を見始めたのだけど、ものすごくおもしろい。ちゃんとゴジラ(というか東宝怪獣映画)なんだけど、ちゃんと円城塔の作品でもあるという。というか円城塔要素、もはや主成分という感じで、登場人物の会話はすっかりそのまま小説の通り。個人的には劇中活躍する個性をもったAIがかわいく、まずこれにやられた(ぼくはSF作品に出てくるAIやロボに弱い)。釘宮理恵と久野美咲の演技が良すぎる。主人公・ヒロインの神野銘も、たいへん魅力的。ここ数年のアニメで一番夢中になっているかもしれない。

 ゴジラというと、これまではどちらかというと地政学的な状況との関連から、怪獣の位置づけが設定として練られたり、ファンの考察がなされたりしてきたんじゃないかと思う。SFというよりも社会批評的な作品だったんじゃないか、と。でも円城塔が入った今回のゴジラは、どちらかというとSF的なゴジラの理論化、すなわちゴジラをはじめとした怪獣が地球に存在していることへの考察そのものが主題になっている、と思う。主人公は存在しない物質のふるまいや存在しない生物の生態について研究している研究者の卵で、彼女は怪獣に直接立ち向かうというよりも、怪獣を成立させている枠組みを解き明かそうとする。他方でもうひとつの主人公サイド、ジェットジャガーを運用する大滝ファクトリーの面々は、正しく怪獣映画の登場人物という感じ。人々が怪獣にどうしようもなく巻き込まれつつもなんとか抵抗する東宝怪獣映画的な視点と、物理法則や時空間のずれをサスペンス的に理論化しようとするSF的な視点が同時に進行するのが、とてもスリリングだと思う。とくに後者に関しては、物性や時間の異なる法則性をもった世界がある空間に共在している、という点をテーマにしているんじゃないかと、今のところ想像している。異なる宇宙同士の葛藤・抗争のビジュアライズとしての怪獣映画……。異なる時間性と物理法則を伴った別の宇宙からの圧として描かれ(ようとしてい)る、都市の破壊と回復(するのか?)