JAN.15,2021

 家具の設計ができるかもしれない、というはなしがあるので少しずつレファレンスを集めたりしているのだけど、なんでもない家具のデザインてなかなかない。自分が机や椅子や棚を設計するなら、人間工学的な曲線を使ったりするのは嫌だし、「構法的なやったった感」も嫌(特に後者は嫌なの……)。実家の和室にあるタンスとかばあちゃんの部屋の謎の低い椅子みたいな格好の参照限がもっとあればいいと思うのだけど、なかなかない。

 ところで、普段使っているフジの中判フィルム(PRO400H)が生産中止になると聞いて、かなり落ち込んでいる。しっかり落ち込んでいる。PRO160NSはたぶん継続なのだけど、三脚使わないとなるとISOは400じゃないと厳しい気もしていて。ただでさえ選択肢が限られているのに、どうすりゃええっちゅうねん! という感じ。消去法的にPortra 400(高い)しかないのだが……。

 買い物に行った帰り、そんなことを考えながら歩いていたのだが、目の前を若い女性4人が並んで歩いていた。なにやら会話が盛り上がっている。歩く速度がかなりゆっくりで、追い抜こうかとも思ったが、歩道の幅が絶妙に狭くて追い抜かすことができない。少し距離を取ろうかと試みるが、歩行速度がゆっくりすぎてなかなか距離も取れない。困っていると、会話の内容が聞こえてきてしまう。「あの歌詞にそんな意味があるとは…」「個人的にはリプリプのリピが至高…オタクの心をたぎらせる…」*1。意味はまったくわからなかったが、なんとなくの雰囲気で、男性アイドルに関して話していることは伝わってきた。暗号化された会話のようで、かなり興味深かった。

 夕食に、街のカウンターしかないような中華に行った。8時までの営業だが、賑わっている。レバニラ定食を食べた。左には常連のおじいさんが座っていたが、とくに言葉を発することなく、レモンサワーとニラ玉を食べている。途中で、別の常連さんが入ってきた。「きみちゃん!」とおじいさんがはじめて言葉を発した。「木曜日も金曜日も来なかったから、死んだと思ったよ!」と炒めものをしている店主のおばちゃんが喜んでいた。幽霊が来たと、ニラ玉を食べていたおじいさんは爆笑していた。2日休んだだけで死んだと思われる親密圏というのは、すごいなと思われた。そして、ご高齢の方の「死んだかと思ったジョーク」はなんとリアクションすればいいのか難しいなと思った。みなさんが笑っているなか、ぼくは多分なんともいえない顔をしながら、生ビールを飲んでいた。

*1:単語はママ。気になったので直後にメモって調べてみたが、けっきょくよくわからなかった。