NOV.15,2018_最近の音楽

最近の音楽。ここ数ヶ月は素晴らしい音楽と出会いまくっていてとても幸福、、。

 

○ Ben Wendel / The Seasons

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Ben Wendel (Ts, Ss, Bassoon on #1, 3, 7, 12, EFX)  / Aaron Parks (Pf)  / Gilad Hekselman (G)  / Matt Brewer (B)  / Eric Harland (Ds)

まずは待ちに待ったベン・ウェンデルの『シーズンズ』のアルバム盤。このブログでも紹介したことがあると思うのだけれど、『シーズンズ』はYoutube上でウェンデルがおこなっていた有名ミュージシャンとのデュオ・プロジェクトで、本アルバムではこのプロジェクトで発表された「January」から「December」までの12曲が、ヘクセルマン、パークス、ブリューワー、ハーランドという固定メンバーでアレンジし直されている。これがまぁすごかった。本当にすごい。ぜひ聴いてみてください。

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まぁメンバー全員がスーパーミュージシャンなので期待を裏切るわけはない、という感じなのだけど、それでもここまでの出来とはねぇ。ぼくはギラッド・ヘクセルマン大好きなので、本当にうれしい。ウェンデルも2012年のアルバム『Frame』よりも格段にうまくなっている気がする。エリック・ハーランドがドラムで入ると曲の雰囲気が良い意味でも悪い意味でもカジュアルになるというか、叩きすぎるというわけではかならずしもないにもかかわらず、ムードを強烈につくってしまうところがあると思うのだけど、本アルバムでは彼の個性がいい方向に作用している気がしている。ブリューワーの拍の整理と、なによりパークスが裏方として本当にいい仕事をしているからかな。

 

○ Matt Penman / Good Question

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Matt Penman (B) / Mark Turner (Ts) #1, 2, 5, 7, 8, 9  / Aaron Parks (Pf, Rhodes, Or, Vib) /  Obed Calvaire (Ds) / Nir Felder (G) #6, 9 / Will Vinson (Ss) #3  / Rogerio Boccato (Per) #3

「パークスまじいい仕事してる」のはマット・ペンマンの新譜でも同様だった。これもすごく良いアルバムだったのでおすすめです。特にウィル・ビンソンがソプラノで参加している3曲目のアーロン・パークスのソロは凄まじい。コンテンポラリー・ジャズの大事な部分がすべて詰まっている、といっても大袈裟ではない。卓越した即興演奏を聴くと「この人は未来が見えているんじゃないの?」って思うことがある。即興というのは当然、曲のはじまりから終わりまでの展開が読めないまま進んでいく音楽の形式なわけだけど、たとえば本アルバムでパークスは、曲の前後の展開をすべて「整えてしまう」ような、全体に調和を与えてしまうような決定的な1フレーズを重要なところで入れてくる。これは本当にすごいことだ。それでいて前へ前へ、我が我がとは決してならず、控えめで静か。だが強い。あとマーク・ターナーも生き生きと演奏していてとてもよかった。ターナーはゴリゴリに難解な曲よりも、少しポップな曲調のバンドのほうが実は生きるのかも(逆にハートランドは少し難解な曲調のほうがフィットする気がする)。ギターのニア・フェルダーは正直あまり得意ではないのだけど(ブルース色が強いギタリストは基本ちょっと苦手)、でも聴けば聴くほどスルメのように好きになってきた感がある。なんだろうこれは。6曲目のフェルダーのソロとか、最初聴いたときはまじでダサいとおもったけど、じわじわ良くなってきた。

 

○ Gilad Hekselman / Ask for Chaos

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ZUPEROCTAVE: Gilad Hekselman (G / B) / Aaron Parks (Synths / Rhodes / Pf) / Kush Abadeya (Ds/Pads), #2, 4, 5, 7, 9

the GHEX TRIO: Gilad Hekselman (G) / Rick Rosato (B) / Jonathan Pinson (Ds), #3, 6, 8, 10

ヘクセルマンの新譜、ぼくは本当に楽しみにしていたのだ。本当に、、、しかしまぁ、うーん。このアルバムは2つのバンドがミックスされているような構成で、電子的な処理が全面化する「ZUPEROCTAVE」とオーソドックスなジャズギタートリオである「the GHEX TRIO」による演奏が織り交ぜられている。実はこのアルバムに収録されている曲はYoutubeにアップされているライブ動画ほとんど聴くことができて、その演奏クオリティがあまりにも高かったのでぼくはものすごく期待していたのだった。

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ヘクセルマンはいつもそうなのだけど、ライブの演奏はダイナミックでものすごく良いのに、スタジオ録音の音源になると急にこじんまりして、手法的になっちゃうところがあると思う。今回のアルバムで言うと、「ZUPEROCTAVE」でやっていることは曲の良さを殺しちゃっているような気がしてしまった。「the GHEX TRIO」の演奏には文句はないのだけど、それでもやはり、ライブでの演奏のほうが断然いいかな、と思う。ヘクセルマンがリーダーで出すアルバムはずっとこの問題を抱えている。でも、ヘクセルマンのやりたいことがわからないわけでは勿論ないんだよね。事後的な「アレンジ」を即興演奏と同じ強度でおこなうことで、単なるスタジオ収録でもなく、ダイナミクス豊かなライブ演奏でもなく、アルバムという形式特有の音をつくっていくこと。ジャズって音楽の形式がもっているひとつのジレンマにちゃんと音楽的に誠実に対応しようという気持ちはわかるのだけど、じゃあせめてライブアルバムを出してほしいでござるなぁ、という感じ。しかしここまでパークスの登場率100%である。どうなっているんだ。

 

○ Punch brothers / The Phosphorescent Blues

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Chris Thile (Vo, Mand) / Gabe Witcher (Vn) / Noam Pikelny (Banjo) / Paul Kowert (B) / Chris Eldridge (G)

2015年リリースなので最新のアルバムではないけれど、最近よく聴いているパンチ・ブラザーズ。めっちゃいいです。ごいすーです。騙されたと思ってぜひ聴いてみてください。曲は2:00〜。

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プログレッシヴ・ブルグラスを標榜する彼ら。ブルグラス、そしてリーダーがマンドリンというとデヴィッド・グリスマンしか思い浮かばないくらいロートルなブルグラス聴きだけど、「プログレッシヴ」という形容詞はまったくおおげさではないと思った。本当に革新的なことをしている。ちなみにギターはJulian Lageと度々共演しているChris Eldridgeなので、ジャズ関係の人にはおなじみかもね。好みすぎて最近は延々彼らのアルバムをリピートしている。クリス・シーリのヴォーカルもええんですよ。

 

○ Chris Thile & Brad Mehldau

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Chris Thile (Vo, Mand) / Brad Mehldau (Vo, Pf)

最後に紹介するのはこのクリス・シーリとブラッド・メルドーの共演作です。パンチ・ブラザーズにはまっていろいろ調べていたらこのシーリとメルドーのデュオ作が去年出ていたので、すごくびっくりした。これも超よかった。

もはや最近はデュオ職人と化しているメルドーさん、本作でもいい仕事してます。というかメルドーの歌声が聴けるという非常に貴重な音源になっているので、そういう意味でもおすすめ(結構渋くて良い歌声)。そういえばメルドー、近々まだたデュオアルバムをチャーリー・ヘイデンとの共作で出すみたいだね。引っ張りだこだ。メセニー、ジョシュア、そして最近で言えばマーク・ギリアナとのデュオか。

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「メリアナ」もとんがってていいんだけど、ずっと聴き続けていく、という感じでもないんだよね。結構聴いていて疲れてしまうので、たまに聴けばいいかなという感じ。それに対して今回のクリス・シーリとの合作はとても日常的で、毎日通勤時に聴きたくなっちゃうような仕上がり。ストレートなポップス的要素もありつつ、どこを切り取ってもメルドー的和声にあふれてもいるし、シールのカントリー・ブルグラス的アプローチとメルドーのジャズ的なアプローチも常にせめぎ合いつつ良い緊張感をつくっている。それはマンドリンとピアノという対照的な楽器のあり方においてもそうだ。もうなんというか、存在論的に非常に異なっているこのふたつの楽器の共演というだけでもとても面白いなと、ぼくは感じる。

 

○ Itsuki Doi / Peeling Blue

土井(樹)さんの新作。いつも楽しみにしているが今回も素晴らしい。20部限定で発売されていたので多分もう入手できないが、土井さんの他の曲はサウンドクラウド等で聴けます。写真は、ジャケットが可愛すぎたのでつい撮ってしまったもの。

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(Mamiya RB67 Professional, KL 90mm F3.5, FUJICOLOR PRO 160NS)