JUNE.6,2019

Architecture will be straightforward, useful, precise, cheap, free, jovial, poetic, and cosmopolitan.

Lacaton and Vassal, 2000

 設計をしていてなにか判断にこまったとき、この言葉を思いだす。ぼくにとってはひとつの指標みたいなものだ。自分が設計する建物は、まっすぐ素直で、便利で、明確で、安く、自由で、陽気で、詩的で、国境を超え、手頃で、楽観的なものであってほしいと思う。どれひとつとして欠いてはいけないものだと感じる。
 ぼくが本当に尊敬できる建物は、つねに何かを鼓舞している。個人の生(活)なのか、向こう三軒両隣の風景なのか、あるいはもっとおおきな地域なのか、地球なのか、範囲のスケールはあるけれど、とにかく他者を励ますような、喜びや楽しみを約束し、ある独特な感覚や快適さを生み出すような、そんな寛大で懐の深いじょうぶな覆いだ。

 建物に限らず、ぼくが好きだな、大切だな、と思うひとはやはり、誰かを励ましている。それは「頑張れ!」と他人に叫ぶようなことではもちろんなく(そういう暑苦しさはむしろ苦手なのだが)、なんというか、ある「表現」が他者を鼓舞するということ、に対する揺るぎない信みたいなものをもっていて、それをまっすぐ実行している人だ。むかし友人が、「ひとりで楽しそうにしてるひとが好き」といっていて深く共感したのだけど、まさにそういうことかもしれない。建物にしろ、ひとにしろ、作品にしろ、そういう存在に出会えるということはとても幸運な、奇跡に近いことだと思える。

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