DEC.14,2018_方位論文を近いうちにまとめようと思う

○ 最近カントをよく読んでいるが、今更ながらあらためて、カントめちゃくちゃおもしれ〜となっている。ただ単純に読み物として面白い。『カント事典』という書籍もその内容の充実っぷりが神がかっていて、流し読みするだけでもすごく楽しい(日本のカント研究者はすごい)。カントといえば純粋理性批判なのだけど、純理以前の、いわゆる前批判期と呼ばれている時期の論文も面白い。たとえば1768年(純理の13年前)のいわゆる「方位論文」と呼ばれている短いテキストはその代表的な例かもしれない(正確には『空間における方位の区別の第一根拠について』)。この論文では “不一致対称物”という概念がキーとなっていて、たとえば左手と右手がそのもっともありふれた例であり、部分相互の位置やプロポーション、サイズが完璧に一致していても、その「向き」によって形が区別されるものだ(実際に鏡に写っている右手が、あたかも左手のように見えてしまうように)。両者を区別するためには、他でもない「私」という存在が視点として必要となる。「私」が空間を定位する座となることで生じる様々な方向性(手前/後ろ、上/下、右/左)に切り込みつつ、本論では「空間」という客観的であるはずのものが、左手と右手の「なんか違う感じ」というきわめて主観的な感覚によって根拠づけられていく。左手と右手が区別できる、というなんてことない経験が、「私」が世界と関わり合いをもっているということを、そして「私の身体」が今ここに確かに実在しているということを際立たせている、という指摘にはとってもハッとさせられ、なんだかすごく勇気づけられる気がしたのだった。

 

○Contax S2の使用感にはまだなれていないが、現像は少しずつ返ってきている(撮っているものは相変わらず道端のゴミがおおい)。微妙なボタンの配置の違いや重心の違いが撮る写真にも少しずつ影響を及ぼしていて、翻っては身体が新たに組み直されていく感じがあって、おニューのカメラは楽しい。

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Contax S2, Carl Zeiss Planar T* 1.7/50, Kodak GOLD 200