170530 パリで撮った写真④

ル・ランシーのノートルダム教会(オーギュスト・ペレ)

とても良かった。建築全体にRCを用いて建設された最古の建物と言われているけど、柱が主構造になっているため外壁が非構造体で、内部空間がとても軽やかになっている。コンクリートでできたフレームに収まるステンドグラスが美しいし、柱がめちゃ細い。配筋どうなっているんだろう。一方で外観はアール・デコ風というか、前近代的な意匠になっていて、この建築がまさに時代が近代に移行する、その瞬間に建てられたことを示している。

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この建築に感動したのは、立地環境も含めてだった。ル・ランシーの教会は治安があまりよくない、黒人の比率が高い郊外に位置している。でも、その環境を実際に体験することで、近代建築というものはそもそも、貴族とかお金持ちのためではなくて、お金のない人たち、身分の低い人たち、あるいは労働者など、社会的な弱者も含めたあらゆる人々に対し、平等に等しく快適な空間を低コストで建設するためのものだったことを、身にしみて感じられたのだった。コンクリート造による世界最古の大型建築とか、彫塑的な表現ではなく"空間"を主題としたこととか、この建築を近代建築の先駆けとする条件はいろいろある。しかしそれと同時に、ピラミッド型の階級社会にかつて打たれた、技術改革による楔としてのモダニズムのコンセプトを、この建築は立地環境も含め、建ち方として体現している。

そういう意味での解放感みたいなものに感動しつつ、同時にその先にある、近代化の成れの果てのような日本のロードサイドの風景も思い出しつつ、なんとも複雑な気分になった。教会の中には、ベビーカーをひいた黒人の女性がひとり、僕らがいる間ずっと祈りを捧げていた。彼女は何を祈っていたんだろうか。 

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(Eglise Norte-Dame du Raincy, 1923, Auguste Perret)

 

そのあとベルナード・チュミによるラ・ヴィレット公園にいったけど、あまりにもひどくて1枚も写真を撮っていない。こういう建築は絶対に作ってはいけないなと、肝に銘じた。そういう意味では、良い教材になると思う。概念が先行する建築はやはり危険だ。下の写真は、ラ・ヴィレット公園に近接するアルド・ロッシの集合住宅。

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(Unità residenziale, 1992, Aldo Rossi)

 

そこから、ルドゥーのラ・ヴィレットの関門まで歩いた。おじさんたちが公園で鉄球をぶつけ合うスポーツをやっていたけど、あれなんていうやつなんだろう。単純そうにみえて実はスゴイ奥が深い系のやつだと思う。

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(Rotonde de la Villette, 1786, Claude-Nicolas Ledoux)

(Canon AE-1 Program, FD F1.4 50mm, フジ PRO400H)