170913_香川県庁舎

●瀬戸内で撮った写真⑦

●3日目つづき。犬島をあとにして、豊島経由で高松へ。途中の豊島では、フェリーの乗り換え時間があったので、「いちご屋」さんというお店でかき氷をたべる。いわゆる「かき氷屋さんのかき氷」というのをはじめて食べたのだけど、あまりにもおいしくてびっくりした。暑さもあいまってか、この世の味とはおもえないおいしさだった。「かき氷」を専門に扱うお店が、最近流行しているとは知っていたのだけど、どうせ氷でしょうよ、と鷹をくくっていた自分を悔いる。阿呆だった。東京のおいしいお店にも、近いうちにいってみようと思う。

●ゲストハウスに荷物を預けてから、先生方と合流するまで時間があったので、まちへくりだす。もってきたフィルム3本は全て使ってしまったので、写真屋さんにいき、フジフィルムのスペリアプレミアム400を3本買い足してから、市内の建築をみてまわる。

●まずは日建設計による『百十四銀行本店』へ。緑青のブロンズ板を用いたファサードは、半世紀近くたって、とてもいい味をだしていた。余計な装飾を配しつつも、とても存在感がある。いいビル。

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●「114TH BANK」のフォントが激カワだった。

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(百十四銀行本店, 1966, 日建設計)

 

●その後、丹下健三による『香川県庁舎』へ。日本の戦後モダニズム建築を代表する、大傑作。日本の伝統建築に見られるエレメントや木割のプロポーションが、近代的な技術で実現されている。戦後日本の建築設計における最もホットな議論のひとつが、西洋のモダニズムと日本の伝統の統合(伝統論争)だったわけだけど、その中で丹下が示した可能性がこの建築である。木造建築のもつリズムをコンクリートで構築するということは、全然合理的なことではないのだけど、だれがどうみても美しいものだから、謎の説得力をもっている。

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●ピロティの寸法がすばらしい。外部と1階ホールの連続性は、前川國男の『神奈川県立音楽堂』のホワイエと庭との関係にとてもとく似ているとおもった。日本と近代建築のピロティとコルビュジエのピロティは実は似ていなくて、日本的なスケールがあいまって、完全に別物になっている気がする。

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●建築写真はおもしろい。いわゆる建築雑誌にのっているような建築写真は、三脚で水平垂直をばしっととって、広角レンズで、手前にも奥にもピントをあわせるためにかなり絞って、撮ることが多い。数枚の写真で、場合によっては1枚で、その建築のもつ情報や建築家の意図した内容を伝えなければいけないので、だいたいそのような撮り方になってしまうのだけど、それゆえに説明的というか、下手をすればつまらない写真になってしまう。ぼくの写真のような、手撮りで、フィルムで、標準レンズで、気軽にパシりと撮っている写真は、変なものが写り込んでいたりブレていたり、アマチュア丸出しの建築写真なんだけど、逆にいえば生々しくて、雑誌の建築写真とは異なる面白さがあるかもしれない。ないかもしれない。

●ルイジ・ギッリが撮る建築写真は、いわゆる説明的な「建築写真」とは程遠いものだと思うのだけど、一方で彼の撮る写真は、たった1枚でその建築の本質を完璧に表現していたりする。ギッリがアルド・ロッシの作品を集中的に撮っていた時期があるのだけど、すばらしい写真ばかり。ギッリはモランディのアトリエを撮った写真も本当にいいし、インテリアも含め、建築、あるいは空間を撮るセンスがすごくある写真家なんだと思う。

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(香川県庁舎, 1958, 丹下健三)

(Canon AE-1, New FD Zoom 35-70mm 1:3.5-4.5, FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)