このあいだ、上野の喫煙所にて、サラリーマンふたりの会話が興味深かった。
小太りの男性が、出張先で古い旅館に泊まらなければいけないことを相談している。どうやらその男性は、古い旅館、というか座敷が苦手らしい。というのも、幽霊が怖いらしい。
「この歳になって恥ずかしいけど、おれ幽霊怖いんだよね。本気で苦手なんだよね。」
「でもさ、よく考えてみいよ。幽霊のおんなってだいたい美人やろ。貞子とかさ。よくみるとさ、おっぱいでかいやん。そして濡れとるやろ。エロいやん。すごいエロいやん。こんなん出会えたらラッキーやんか。」
「たしかに。」
「でも美人じゃない幽霊もいるかもしれないじゃん。」
「でもよく考えてみいよ。ブスの幽霊、怖い? 怖くなくない? ブスの幽霊怖くなくない? 美人の幽霊ならラッキー、ブスな幽霊は怖くない、幽霊を克服するキモはこれやで。」
「たしかに。」
「あれは幽霊がこわいんじゃなくてさ、美人が怖いねん。美人は怖いねん、生理的に。幽霊が怖いわけじゃないねん。」
「そうかぁ。おんなって怖いなぁ。」
「でも彼女欲しいなぁ。」
だいたいこんな感じだったと思う。幽霊は怖いという話しから、幽霊はエロいとなり、どういうわけか最終的に、美人は怖い、だから彼女ができないんだ、ということになっていた。根本的には全然問題解決になっていないのに、ロジックでなんとなく納得しちゃう感じが、とてもおもしろかった。
たしかに、美人、あるいは美しいものには、どことなく不穏な感じや、不気味な感じがある。デジタルで作った完全にシンメトリーな顔を見たことがあるけど、かなり不気味だったことを覚えている。あの不気味さは、どこからくるのだろう。3DCGで人間をモデリングするときにも、いわゆる「不気味の谷」を回避するために、最近では顔の歪みとか、左右非対称の髪型とか、笑ったときの歪んだ口元とか、左側にだけあるほくろとかまで表現するらしい。
(film : Kodak Potra400)